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  • 兎澤直樹

気まぐれ社長コラム No.21「しんどいときもある」

更新日:5月31日

*この記事は弊社ドットコネクトの学生アルバイトに配信している「気まぐれ社長コラム」の内容(2024年5月28日)を抜粋して掲載しております。


これから生きていけば、「必ず」と言っていいほど「常に順風満帆」とはいかないだろう。


挫折したり、努力しているつもりなのに結果が伴わなかったり、失敗が連続したり、そんな自分の情けなさに落胆したり、人前で恥をかいたり、プライドが深く傷ついたり、想いを寄せていた異性にフラれたり、大切な人と離別したり、詐欺に遭って大金を失ったり、思わぬトラブルや災害や病に襲われたり、色々だ。


実は僕は、26か27歳くらいのときだったと思うが、しんどいことがいくつも同時期に重なって、もう少しで鬱になりそうな、その手前まで行ったことがある。


あのときは毎日心がとてもしんどくて、でもコンサル先のお客さんが居たので仕事も休めず、起き上がれない体と心をなんとか振り絞って持ち上げて新幹線や飛行機の座席に運んでいた。コンサルが終わるとどっと疲れて、ぐったりしながら帰ってきていた。


夜は、一応眠くはなるのに、色々と考えすぎてしまって眠れず、芋焼酎をロックで2杯一気飲みして思考できないように脳をバグらせるか、医者に処方してもらった睡眠導入剤を飲まないと眠れない日々が2年以上続いたのだ。


なんとか寝て起きても眠りが浅く、いつまでも頭の中がなかなかスッキリしない。


何が辛いって、辛くないフリをするために余計に頑張ってしまうことが自分をさらに追い込んでしまうことが分かっていてもそうしなければならなかったことと、辛い状況の「終わり」が見えないのが辛いのだ。


メンタルフルネスが大事とか言われても、メンタルフルネスに関する本を買ってもとてもじゃないが、本なんて読む気になれないのだ。ポジティブシンキングなんてものも、こんなとき大して役に立たない。


本当にしんどい2年間だった。正直、あまり詳細な記憶もない。おそらくあの2年間で僕の脳細胞はかなりの数が死んだんじゃないかと思う。


その2年の間で、とある尊敬する先輩経営者2人にだけ、飲みながら別々に相談したことがある。


「実はしんどいことがあって、なかなか眠れない日々が続いてるんですが、社長はそういうことってありましたか?」と。


1人目の経営者は、「オレもあったで!資金繰りがホンマにやばかった時期があって、その時は会社潰れると思ったわ。もうダメだと思った。そのときは市販のドリエルでも全然寝られへんかったから、強い睡眠導入剤飲んでたわ!」と言っていた。


「あ~、こんな強そうな社長でもそういう時期があったのか~」と、なんとなく気持ちが軽くなって、医者に相談して睡眠導入剤を処方してもらうことを恥ずかしいことと思わず、行動に移せたのだ。


2人目の経営者はコンサル先の社長だったのだが(相談した当時65歳くらい)、「20代の頃に、結婚したばかりの元奥さんが身ごもりながら急に病気にかかって、お腹の子どもと一緒にあっという間に亡くなってしまった。あのときは辛かった」と言っていた。


一番長くコンサルさせていただいた会社さんだったのに、社長がそんな過去を抱えていたことを全く知らなかったので、とても驚いたのを覚えている。


そして追加で質問してみた。


「辛すぎるご経験だったと思うのですが、ずっと前向きに仕事されて、立派に経営されていますよね。その壮絶な過去はいつか時が忘れさせてくれるものなんですか?」と。


「いや、忘れることはないねぇ・・・」と言っていた。


僕は「あ~、時が忘れさせてくれる訳じゃないんだ~。背負って生きていくんだな~」と思った。何か忘れさせてくれる手段を求めていたところもあったと思うが、そんな手段がある訳ではないことを知り、ある意味で僕も覚悟が決まったのだ。


ちなみに2人目の社長はその後、2回目の結婚をされているが、1回目の結婚相手の方の命日にはお墓参りを欠かさず、母の日にはそのお義母さんに今でもお花を贈り続けていると教えてくれた。そしてそのことを、2回目の今の奥様もずっと承認してくれているのだそうだ。


僕は凄いと思った。


案外、凄いと思える人、成功者、輝いている人、順調そうに見えるような人であっても、とてもしんどい壮絶な過去を経験している人も少なくない。


君たちもこれから生きていけば、突然しんどい想いをする出来事が起こるかもしれない。


僕もその忘れ方を教えることはできないが、「こういう人たちも壮絶なしんどい経験してきているんだ」ということを知っておくだけでも少し心が軽くなるかもしれない。


「なんで自分だけこんな想いをしなければならないんだ・・・」と絶望しなくても大丈夫だ。


「自分だけ」ではないし、その過去を忘れることなく背負って生きていく中で、「これだ!」と思えるような人生の方向性を見つけて、一心不乱に打ち込んで、楽しみを自ら創り出し、立派に家族を支えていたりする訳だ。


そういうロールモデルとなる人や思考は、どんどん人と会ったり、本を読んだり、旅をしていれば見つかるものだ。


一番良くないのは、「自分だけの世界」から出ようとしないことだ。


おそらくだが、そういう人が鬱や絶望に行きつくのだと思う。


それまで心身共に健全に生きてきた僕でもなりかけたのだから、誰だって鬱になる可能性はある。


メンタルが強いとか、成績が良かったとか、仕事の能力やモチベーションが高いとか、そういうことははっきり言って関係ないのだ。


心がしんどくなると一切本なんて読む気になれないから、読めるうちに読んでおくのだ。


そして、しんどくなったらとにかく信頼して、安心して相談できる人に相談することだ。


僕の場合は、親や上司に相談するのがなぜだかできなかったので、尊敬する経営者2人に相談したのだ。


P.S.

心がしんどいときには、ためになる本とか勉強とかできないが、唯一僕が見れたのは「絶対に笑ってはいけない」や「すべらない話」などのお笑いだった。何も考えないで済む、とにかくくだらないものしか見れなかったのだ。バラエティ番組とかも子どものころから好きではあったが、それまでお笑いなんてくだらなくて、社会の何の役に立つのかよく分かっていなかったと思うが、その時初めて、「笑う」ことの大切さと「笑わせる」人たちの凄さを知ったのだ。


ちなみに、人類史上、あまりに壮絶だった出来事のひとつがナチスドイツによるユダヤ人やポーランド人への迫害と、日本における空襲や原爆による大量虐殺、特攻などだろう。これらは君たちも知った方がいい。中でも、アウシュヴィッツ強制収容所に囚われたものの奇跡的に生還したユダヤ人の心理学者(V.E.フランクル)の書いた本『夜と霧』はとても有名で、極限状態でも生き残れる人の精神、人間の精神の偉大さ、生きる意味などを感じられる。しかし、鬱になるととても読める本じゃないので今のうちだ。笑


長くなって申し訳ないが、僕が一番好きな映画は、スピルバーグの最高傑作とも言われる、「シンドラーのリスト」だ(これもしんどいときにはとてもじゃないが観られなかったが)。


経営者の不屈の精神を感じられる本で大好きなのは、僕が一番尊敬する経営者である出光佐三さん(出光興産の創業者)をモデルに書かれた「海賊と呼ばれた男(上・下)」という本だ。これを初めて読んだとき、世界で最も劣悪な航空会社だと僕が個人的に思っているアメリカン航空のあまりに乾燥し過ぎな機内で読んでいたのだが、それでも号泣して涙が止まらなかったほどだ。笑

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