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兎澤直樹

気まぐれ社長コラム No.19「自由」とは

*この記事は弊社ドットコネクトの学生アルバイトに配信している「気まぐれ社長コラム」の内容(2024年5月21日)を抜粋して掲載しております。


さて、前回のコラムで、「自由」とは何かについて少しだけ触れた。


今回は、もう少しこの「自由」というテーマについて考察を深めたい。


僕は、生きる上で「自由」をかなり大事にしている。


しかし、「自由」ってそもそもどういう状態か?


なぜ、「自由」を大切にしているのか?


そして、「自由」を勝ち取るために大切なことは何か?


そういうことを整理することで、これからの君たちの人生が少しでも良いものになったらいいと思って書いている。


まず、「自由」ってそもそもどういう状態か?


前回のコラムでこう書いた。「自由というのは要するに、あらゆる選択肢を持っていることと、その中から自分自身の意思で選び取るということを両立している状態のことだ。」


つまり、「自由」であると言える状態を満たすには2つの条件が必要だと僕は考えている。


①取りうる選択肢を持っている


②その選択肢の中から自分自身の意思で選び取っている


例えば、お金がなくてユニクロの服しか買えない人は果たして自由と言えるだろうか?ユニクロより高いお店でほしい服を見つけても買えないという状態だから、選択肢がユニクロしかない。ほしいのに手に入らず、自分の意思と反するものを掴まされる人生だ。だから自由とは言えない。


しかし、同じユニクロの服を買うにしても、例えばハイブランドの服を買う経済力を実際に持っていながら、「自分はユニクロのTシャツがいいんだ」と本気で思っていれば、その人は複数の選択肢の中から自分の意思で選んでいる訳だから自由と言える。


実は、ユニクロの服を買うという同じ行為(結果)であっても、2人の幸福度はまるで変ってくる。


他にも例を挙げるなら、自分や子どもに栄養価が高く美味しい食べ物を与えられるかどうかとか、子どもがやりたいことができたときにやらせてあげられるかどうかも、お金や情報という点において、取りうる選択肢を持てる状態を作れるかどうかがとても大切になる。


ちなみに、なぜ僕が「自由」が大切だと思っているかというと、自分の幸福度を高めるひとつの重要なファクターだと思うからだ。そして、選択肢が複数あれば、何かひとつの道で行き詰ったとしても絶望せずに済むからだ。若い世代で増えているという自殺も、他に取りうる選択肢がなかったから行われてしまうことだと思う。


僕の場合は起業したことで、結果として幸福度が明らかに増したことを実感しているが、起業するという選択肢を現実的に持つことができたのは前職での経験も大きい。前職での経験があったおかげで今の自分があるのは間違いない。


しかし、前職を辞めたのも、どんどん会社が大きくなるにつれて、あるいは出世させていただいているにも関わらず、「自分自身で決める(選択肢の中から選び取る)」ことがどんどん厳しくなっていったからだ。僕は自由じゃない状態で生きるのがとても辛かったのだ。


前職に入社したての若手の頃には特に自由はなかった。できることが少ないから、最初はとにかく先輩に教えてもらって必死にくらいつく。どうしても先輩都合になるから自分のスケジュールを自分で自由に決めることなどできない。でも、まずはそこからスタートしたわけだ。


また、おそらく20代後半の頃くらいまでは、「起業」という言葉はもちろん知っていても、起業する力など当時の僕にはなく、「現実的に取りうる選択肢」とは言えなかった。それでもなんとかかんとか自由度を高めてこれたのは本当に良かったと思う。


要するに、「自由」であるか否かというのが、僕自身の人生に物凄く影響してきているのだ。


もちろん、自由のためには起業しかないということではない。自由度が高まる可能性は高まるとは思うが、どこに勤めていたって、どんな仕事をしていたって、それが起業も含めたあらゆる選択肢の中から自ら選び取っているならそれは自由だ。


少しでも「自由」に近づくため一番大切になのは、とにかく己を鍛え、人生の選択肢を増やすことだ。そのために勉強するのだ。自分の市場価値を高めるのだ。人間力でも仕事力でも、まずどこでも生きていける自分を作るのだ。


選択肢を増やす努力を怠れば、当然「誰か」に決められた人生を歩まされることになる。ほしいものがあっても買えない。行きたいところがあっても行けない。今の道が行き詰ったときに絶望してしまうかもしれない。そうならないように勉強して、「こうしていけば楽しく生きていける」というものを、現実的に取りうる選択肢として持っておくのだ。


今、現時点で持っていなくてもいい。「今はまだ持てていない」という自覚があれば、持つためにするべき次の努力が見えてくる。アクションにつながるのだ。


「天は自ら助(たす)くる者を助(たす)く」という言葉がある。つまり、自分自身で努力している者にこそ、天は味方してくれるのだ。これは本当だと思う。詳しくは「自助論」という長く読み継がれている名著に書いてあるのでぜひ読んでみてほしい。


それと、「自由」を行使するために大切がことがある。それは自らを律することができる心を持つことと、自分で決断した結果に対する責任は全て自分で取る覚悟を持ち続けることだ。


自由というのは、なんでもかんでも好き勝手やっていいということではない。例えばお金をたくさん持っているからと言って偉そうにして誰かを不愉快にしても平気な人間でいるのは、人として違う。法律を破るのも違う。社会に生かされている上での自由なのだから、ルールやマナーは当然守るという範囲の中での自由だ。


自由度が増していくにつれて僕が感じるのは、自由な生き方をすればするほど、自分が選んだ道がうまくいかなかったときには自分しか責任を取り得ないという状態になっているということでもあるのだ。自由で生きようとすればするほど、自分自身を磨く必要がある。しかし、僕はそれを認識してなお、望んで自由度を高めていく道を選んでいるのだ。


なぜか。人生は一度しかないからだ。一度しかない人生だから自分が納得できる生き方をしたいのだ。そのために自由な状態でいたい。あらゆるものを自分自身で選びたいのだ。そして、人間として成長したいのだ。おそらく自由な生き方というのはそういう生き方ではないかと思うのだ。


そのために取れるリスクは取るし、必要な努力(勉強)はする。


君たちは無限の可能性を持っているから、どんどんチャレンジして、努力して、やりたいことは全部やって、食べたいものは全部食べて、行きたいところには全部行って、人生を充実させてほしい。とはいえ君たちはまだ学生だから、きっとその過程で思った以上にうまくいかないとか、苦しいと感じるとか、そういう場面に遭遇するはずだ。そのときに今日の話を思い出せば突破口が見えてくるはずだ。


P.S.「自由」という言葉は、福沢諭吉さんが「liberty」を「自らをもって由となす」と翻訳したのが始まりらしい。つまり、自由とは、他人に与えられたものではない「自らの意思や考え」を、「行動の由(理由)」とすることを意味していると解釈したようだ。もうすぐ『論語と算盤』の渋沢栄一さんに替わってしまうが、諭吉さん、さすがである。

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